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10月13日の夜、八瀬赦免地(しゃめんち)踊を見学に行ってきました。その中心となるのが、精巧な透かし彫りで装飾された切り子燈籠をかぶって踊る燈籠踊りで、室町時代の風流踊りの面影を残しているといわれています。
村の中心地に唯一の夜店が出ています。
変わった名前のこの踊りの由来は、平安時代に遡ります。
夜7時前になると、「新家」が踊りの開始を宿元に告げに出発します。「十人頭」は、踊りの指導などを行う30歳の青年10名で、その最年少者が新家です。
平安の昔、八瀬は延暦寺青蓮房配下で雑役免租の地でした。
「音頭取り」6~7名と「太鼓打ち」1名は、哀愁のこもった10曲を口伝で受け継いでいます。
南北朝の建武3年(1336)足利軍勢に追われた後醍醐天皇が比叡山に逃げ延びたときに、この地の人々が駕輿丁(輿を担ぐ役)として弓矢を持って警護しました。
この頃になると村のあちこちから踊り子(11~12歳の女子10名程度)が集まって来ました。
その功績を認められて「八瀬童子等年貢以下公事課役免除云々」という御諭旨(天皇の公文書)が下され、代々守り継がれてきたのです。
「燈籠着(とろぎ)」という、昔女官から下賜されたという御所染の着物で女装した13~14歳の男子8名)も集まって来ました。「警固」という20歳の男子が補助役として燈籠を支えます。
ところが、江戸中期の宝永年間(1704~1711)比叡山山門と山林境界争いが起きました。
集合場所の八瀬小学校前から八瀬天満宮まで行進します。踊り子は、友禅の着物に緋縮緬の小袖をからげています。
それまで柴や黒木などを都に売り歩いて生計を立てていた村民にとって、入山往来の制限は生活の糧を失うことになり、結束して幕府に上訴することになりました。
途中で、燈籠8基、踊り子、音頭取りなどがそろっているかを頭(十人頭の最年長者)が確認をする儀式があります。
八瀬の村民は、代々伝わる御諭旨の由緒をもって辛抱強く愁訴を重ねること4年、ついに時の老中秋元但馬守喬知が八瀬の地を巡検することになりました。
行列の先頭の提灯持ち
当時権勢を誇った比叡山山門との境界争いは、結果として宝永7年(1710)将軍徳川家宣も筆を加えられるなどして「禁裏御料に至っては永く先規を守るべきものなり」との思いもかけない勝訴となり、八瀬が改めて赦免の地として公認されたのです。
この裁定に歓喜した村民は、後醍醐天皇の聖業を偲ぶとともに、老中秋元但馬守への報恩感謝の念を忘れることなく、その御霊を氏神の八瀬天満宮の本殿横に祀りました。
八瀬天満宮の参道まで来ました。
そして、毎年10月の「秋元社」の例祭で昼は御神楽と御湯の式を、夜には芸能「赦免地踊」を奉納してきたのです。現在は、八瀬郷土文化保存会が踊り等を継承しています。
十人衆が一旦観客のざわめきを静め、音頭取りの曲に合して行列は石段を登っていきます。
境内に造られた屋形の周りを燈籠着が回ります。
ちなみに、上で出てきた「八瀬童子」とは、比叡山延暦寺の雑役や駕輿丁を務めた八瀬の村民を指します。
境内には舞台が造られており、芸能を奉納します。踊り子の「塩汲踊」、かわいい!
八瀬童子は、後醍醐天皇以降の多くの天皇の棺を担ぐ役目を務め、明治元年に明治天皇が初めて江戸に行幸した際には八瀬童子約100名が参列し、10名ばかりは東京に残り天皇の雑役をしました。
明治天皇の葬送では喪宮から葬礼場まで棺を陸海軍いずれの儀仗兵によって担がせるかをめぐって紛糾し、調停案として八瀬童子を葱華輦(天皇の棺を載せた輿)の輿丁とする慣習が復活しました。
大正天皇の葬儀には東京で、昭憲皇太后の場合は東京と京都で葬儀に参加しました。
燈籠着が音頭にあわせて屋形の周囲を回る「燈籠廻」
明治維新後は八瀬の地租免除の特権はなくなりましたが、毎年地租相当額の恩賜金を支給することで「赦免地」の特例が続きました。
踊り子がもう一度登場して「花摘踊」
最後に、警固が燈籠をかぶって「狩り場踊」の音頭に合わせて屋形の周囲を何回か回ったあとに、そのまま境内を去っていきます。
平成22年、八瀬童子会が所有する後醍醐天皇綸旨や各天皇の葬儀などに関わる文書を含む741点が一括して重要文化財に指定されたました。
初めて見た赦免地踊は、洛北の奇祭といわれるだけあって幻想的でしたが、それにもましてこの村の子供たちや若者たちの熱意が感じられる祭りでした。
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