行願寺（革堂） 藤袴祭

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昨日は寺町通にある行願寺にいってきました。「行願寺」は山号を霊麀山(れいゆうさん)という天台宗の寺院で、革堂 (こうどう/かわどう)とも呼ばれ、西国第19番札所です。平安時代の寛弘元年(1004)行円が一乗小川に堂を建てたのが始まりとされます。

行円が寺の創建を願い出て、一条天皇の勅願により建立されたことから、行願寺と名付けられました。行円は猟師でしたが、射止めた牝鹿が愛おしそうに小鹿をなめながら息絶える様子を見て、殺生の罪を悔やみ仏門に入ったと伝えられています。

行円は、その牝鹿の革（かわ）衣に経文を書いて寒暑に関係なく身につけていたので、革聖（かわひじり）と呼ばれました。やがて人々は寺を革堂とよぶようになり、信仰が広がりました。参道にはテントが並んでいました。

今年は10月10日（金）～10月13（日・祝）の期間に「源氏藤袴会」の主催で「藤袴祭」が行われ、行願寺や下御霊神社の境内、寺町商店街が藤袴で彩られます。この会は京都に自生する藤袴の保全育成を行っています。

願い札の「アサギマダラ」は旅をする蝶として知られ、藤袴の香に誘われて遠方から飛んでくるといわれます。後で訪れた下御霊神社で見かけました。

この日は、別の種類の蝶がきていました。ツマグロヒョウモン（褄黒豹紋）といい、写真はその雄のようです。

山門を入った左手に「延命地蔵菩薩」と「天道大日如来」が祀られています。その後ろは手水舎です。

藤原氏や源氏、後鳥羽上皇など平安時代の歴史を動かした人々も寄進や参拝をしました。平安時代中期、藤原氏の権勢は頂点に達し、藤原道長の3人の娘はいずれも3代の天皇の中宮となりました。こちらはナミアゲハだと思います。

本尊の「千手観音像」は行円の作と伝えられ秘仏になっています。洛陽三十三所観音霊場十九番、神仏霊場巡拝の道の百十四番の札所でもあります。本堂は文化12年(1815)の建立で、京都市有形文化財。

行願寺の創建から8年後の寛弘9年（1012）藤原道長の三男・藤原顕信は行円のもとで剃髪出家して、行願寺と藤原氏の結びつきが深まりました。源氏物語の第30帖「藤袴」の巻では夕霧が玉鬘に藤袴を差し出して歌で言い寄ります。

また、薫大将や匂宮は藤袴の香りを身につけていたとされます。本堂の南に宝物館（写真の右）があり、悲しい物語のある「幽霊絵馬」と行円上人が着ていた鹿革の衣も納められています（正月に公開）。

一方、日本最古の巡礼路とされる西国三十三所は2018年に草創1300年を迎えました。「行円上人布教之真影」、左下の「車石」は、京都周辺の三街道に牛車が通るために2列に敷かれた石で、雨でぬかるんだ峠道でも重い牛車が通ることができました。

「西国三十三所札所会」は、特別拝観や当初の巡礼を再現する「徒歩巡礼」など、様々な記念事業を展開しました。行願寺では、2017年から源氏物語ゆかりの「藤袴」を一般公開して、創建時の平安京の原風景をしのぶことにしたそうです。

上は本堂のななめ向かいにある「寿老人神堂」　京都七福神の一つで、豊臣秀吉が万人快楽のため行願寺に奉納したと伝えられる寿老人像（桃山時代作）を祀っています。

「鎮宅霊符神堂」　鎮宅霊符（ちんたくれいふ）とは中世初期に中国より伝来した家内安全のための72種の護符で、太上神仙鎮宅七十二霊符、太上秘法鎮宅霊符などと呼ばれます。この霊符を司る神が鎮宅霊符神だそうです。

藤袴はラベンダーにも似た甘い香りがあり、高貴な平安貴族は若葉をもんで髪の毛にしのばせ、湯に入れて浴し、身に帯びたりするなどして大切にしたそうです。寿老人神堂の横には奉納された七福神の石像が置かれています。

「鐘楼」　現在の建物は文化元年(1804)の造営で、京都市有形文化財です。室町時代に革堂の鐘は上京の町衆の集合の合図だったそうです。鐘楼の左の境内北西で「藤袴コンテスト」を行っていました。

祭りの藤袴は源氏物語第30帖「藤袴」に登場するものと同じ京都古来自生種で、準絶滅危惧種に指定されています。「御所藤袴の会」の協力によって一般公開が可能になりました。鉢植えの藤袴が置いてあり、鐘楼前の看板にシールを貼って投票します。

「百体地蔵尊」　「梵鐘再鋳落慶記念」とも書いてあり、おそらく戦時中に供出された梵鐘を再鋳するときに、このお堂を建て境内の石仏を集めたものと思われます。

境内の西北の隅にある「加茂大明神五輪塔」　室町時代の作とされます。左の祠は「出世弁財天堂」で、1983年落慶、総檜造で宮大工・榊原鉄三・省三両氏により改築、弁舌・音楽・学芸の神の弁財天を祀ります。

五輪塔の水輪がくり抜かれて、その穴に「加茂大明神」が彫られています。加茂大明神は上賀茂・下鴨神社の祭神・賀茂別雷大神（かもわけいかづちのおおかみ）、賀茂建角身命（かもたけつのみのみこと）・玉依媛命（たまよりひめのみこと）の総称です。

この辺りの藤袴は薄紫の蕾も多く、かすかな芳香を放っていました。源氏藤袴会では京都市内で育ててくださる方に、5月から6月ごろに苗を渡してくれるそうです。このあと、藤袴で彩られた下御霊神社と寺町商店街を訪れました。

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