琵琶湖疏水 国宝・重要文化財に指定される
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先月(5月16日)国の文化審議会において、琵琶湖疏水の諸施設を国宝・重要文化財に新たに指定することについて、答申が出されました。琵琶湖疏水は、明治維新・東京遷都によって衰退した京都の復興のために、
琵琶湖から水路を開き、産業や生活をささえる都市基盤の近代化を行った一大事業です。TOPは滋賀県の三井寺近くの「⑦大津運河」。琵琶湖疏水船の乗下船場と向うに「➀第一隧道」(トンネル)があります。
明治23年(1890)の竣工以来、琵琶湖疏水は豊かな水の恵みで、水道、水力発電、舟運、かんがい、庭園、防火用水等などで京都の発展に貢献し、最近では水辺の景観や遊覧船などにより観光資源にもなっています。左は「⑧安朱川水路橋」。
「山科疏水」、この辺りの疏水は当初に造られた第一疏水(明治23年完成)で、下流で「②第二隧道」に流れていきます。後に、電力不足を補うために明治45年(1912)に第二疏水(左の山中のトンネル)が完成しました。
「重要文化財」として指定される施設は、大津市から京都市にかけて、24か所の施設で、そのうち、5か所が「国宝」として指定されることになりました。下は京都市の発表資料「国宝・重要文化財に指定される施設の位置」(写真のタイトルの番号に対応)です。
上流から下流に向かって国宝・重要文化財に指定された施設を紹介しています。琵琶湖の水は奥の「③第三隧道」から蹴上船溜に注ぎ、左から第二疏水の「⑭日岡隧道」が合流、さらに左に両疏水の水面差を調整する「⑮新旧両水連絡洗堰」があります。
「⑳旧御所水道大日山水源地喞筒所」(旧御所水道ポンプ室) 第一疏水から大日山貯水池に水を上げるポンプを据え、御所水道として京都御所に防火用水を送水していました。喞筒はポンプと読み、オランダ語の漢字表記です。
右は蹴上浄水場の取水施設で、右の谷(三条通)を挟んだ向かいに浄水場があります。今回、浄水場の施設も重要文化財に指定されました。
「⑲蹴上浄水場第一高区配水池」 レンガの建物の下に配水池があります。明治45年に完成、現在も使用中です。下は10年前の写真で、配水池を更新するためにレンガの施設を曳家工事で一旦移動させる準備をしていました。
蹴上船溜に戻って、「㉔本願寺水道水源地」 琵琶湖疏水の水をここに貯めて、高低差46mある東本願寺までベルギー製の鋳鉄管を埋設して防火用水として利用しました。
「④インクライン」 琵琶湖疏水の舟運は昭和26年(1951)に廃止され、その後残っていたレールも撤去されましたが、産業遺産として保存するため昭和52年(1977)に復元されました。現在は桜の名所となっています。
「⑯合流隧道」 第一疏水と第二疏水が蹴上船溜で合流してこのトンネルを通って蹴上公園の方に流れてきます。洞門に疏水工事の主任技師・田邊朔郎の筆による石額「藉水利資人口」(すいりをかりてじんこうをたすく)があります。
「⑰蹴上放水所」 合流隧道からの水を発電所の送水管に送る過程で水位調節を行う堰で、一定の水位を超えた水はインクラインの地中管に送られて南禅寺船溜に注ぎます。 残った水は「疏水分線」として南禅寺の方に向かいます。
「㉑蹴上発電所旧本館」 第1疏水が完成した翌年の明治24年(1891)第一期蹴上発電所が運転を開始、営業用としては日本最初の水力発電所となりました。現在は明治45年に完成した第二期蹴上発電所が関西電力蹴上発電所によって保存されています。
「⑤南禅寺水路閣」 蹴上からの疏水分線の水が通ります。当初の計画では山の中をトンネルで水路を通す予定でしたが、その上に亀山天皇の分骨所がある事が判明して、急きょ計画を変更して谷を渡る水路橋になりました。
レンガ造りの14連アーチ、全長94mの赤レンガの構造物で上部にはロンバルディア帯(初期ロマネスク建築の壁面装飾)を施しています。平成8年(1996)には国の史跡に指定されています。
ところで、今回の文化審議会の答申内容では「琵琶湖の湖水を京都へ疏通し、舟運、灌漑(かんがい)、防火、発電、水道といった多岐の機能を果たす長大な運河の構成施設。西洋技術の習得過程にあった明治中期において、当時の土木技術の粋を集めて築かれ、
世界的に高い評価を得た類い希なる構造物であり、明治日本における都市基盤施設の金字塔。自然と人工、伝統と近代の景観が織りなす京都の比類ない風致を育んだ琵琶湖疏水の代表的遺構であり、文化史的意義も極めて深い。」としています。
また、近代の土木構造物としては、初めての国宝となるそうです。
「㉒夷川発電所本館」 南禅寺船溜からの疏水は鴨東運河として西に流れていき、大正3年(1914)に夷川発電所(下の写真)と伏見発電所(墨染発電所)が完成しました。現在は関西電力の無人発電所となっていいます。
落差3.42mにもかかわらず常時280kWを出力しています。一般家庭の平均的な電力使用量は月250KW程度なので、約800所帯の電力をまかなっているそうです。疏水は西の鴨川まで流れていきます。
最後の写真は「鴨川運河」、琵琶湖疏水は鴨川に沿って南に流れていき、伏見に「㉓伏見発電所本館」(現関西電力伏見発電所)があります。数か月後の官報告示を経て、琵琶湖疏水の諸施設は正式に国宝・重要文化財となります。
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コメント
こんばんは。ゆーしょーです。
琵琶湖疏水の国宝のニュースを
テレビで放送してましたね。
5枚目のイラストを見ると
大工事の様子がよく分かります。
サクラもすごくきれいですね。
投稿: ゆーしょー | 2025年6月 6日 (金) 22:27