妙蓮寺 八塔頭をめぐる
過去の全記事 2006年1月27日から毎日更新しています。
昨日の記事に続いて、妙蓮寺の境内にある八つの塔頭を見て回ります。それぞれの塔頭の創建の詳細についてはほとんど分かっていませんが、日蓮宗の伽藍配置や建築史を研究する丹羽博亨氏によっていくつかの歴史が明らかになりました。
その論文は、丹羽博亨「近世京都日蓮宗立本寺、妙満寺、妙蓮寺の伽藍配置」、日本建築学会計画系論文報告集No.424、1991年。(TOPは山門を入って西を見たところ、下は妙蓮寺の境内図です。)
『妙蓮寺開闢再興略記』によると天文法華の乱で堺に逃れたあと、天文10年(1541) の帰洛後、「僧坊27院・学室道輪寺」が整備されたとあります。(航空写真を見ると、境内の北東に大きな墓地があり、塔頭と周辺の民家との境ははっきりしていません。)
天正15年(1587)に豊臣秀吉の聚楽第造営に際して現在地に移転したときにも27院があったようです。「慈詮院(じせんいん)」、TOPの写真の駐車場の奥にあります。『寛延元年奉行調査古図』妙蓮寺蔵、寛延元年(1748)によると、
享保15年(1730)の西陣焼で塔頭6院・番神堂等を焼き、 このとき慈詮院は一旦廃寺となったようです。(当番という看板がかかっていて、本山の行事や法要の準備、運営などを塔頭が輪番で担当しているようです。)
天明8年(1788)の大火で本山の伽藍と同時に残った塔頭の全てを焼失しました。 本堂に西にある「本妙院(ほんみょういん)」 庭園は枯滝石組、枯池の枯山水式庭園で、庭の面積に対して大ぶりの石が多く使われています。
本妙院の庭園は少なくとも、江戸時代後期(1788年の天明の大火以前)に作庭されたといわれ、昭和63年(1988)に京都市の名勝に指定されました。
寛政2年(1790)に妙蓮寺の仮本堂が再建され、この頃から塔頭も順次再建されていったと考えられます。本堂の北西にある 「常住院(じょうじゅういん)」
幕末の『花洛羽津根』清水換書堂、文久3年(1863)によると、塔頭28院、末寺として北野御前通・宥清寺(ゆうせいじ)などがあるとされます。
明治時代になり、神仏分離令とそれに続く廃仏毀釈、上知令などによって妙蓮寺も大きな困難を迎えた考えられます。境内の北東隅にある「堅樹院(けんじゅいん)」
大正5年(1916)の碓井小三郎編 『京都坊目誌』によると、旧地は8,590坪、今4,705坪、塔頭は(現在と同じ)8院となっています。境内地は上知令によって接収されたと考えられ、そのときに塔頭の統廃合が行われたようです。
「圓常院(えんじょういん)」 この塔頭にはHPがあり、創建は龍雲院日純上人で、時期は不明です。龍雲院は日純上人の塔所で、明治になって廃絶しました。
この塔頭は絵入りの御首題が頂け、ご朱印マニアの間では人気のお寺で、御朱印を特集した本でも紹介されているそうです。ご住職は圓常院だけではなく本山の妙蓮寺をはじめとして他のお寺の御朱印や御首題も描かれているそうです。
ちなみに、ご朱印には通常お寺の本尊の名称や通称が書かれています。日蓮宗の本尊は「十界曼荼羅」で、法華経の題目「南無妙法蓮華経」を中心に仏教の十界(地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人間界、天界、声聞界、縁覚界、菩薩界、仏界)を表しています。
そのため、日蓮宗ではご朱印ではなく御首題というそうです。(上はペットのお墓だと思います。下の祠には御首題や布袋様、御神石らしきものが安置してありました。)
お庭(参道)はよく手入れされていて、季節外れの紅葉が鮮やかでした。
ところで、塔頭の名称には「院」という院号が付く場合が多いのですが、「庵」や「房」、「坊」、「軒」、「殿」などが付く場合や、寺号がつく塔頭もあります。「本光院(ほんこういん)」 こちらは特に情報は見つかりませんでした。
「院」は大名家などが、帰依する僧を開祖として創建したものです。一方、「~寺」は、民衆からの浄財によって創建されたものを指す場合が多いようです。「庵」は僧侶が住んでいた住居を塔頭としたものだそうです。
「玉龍院(ぎょくりゅういん)」 この塔頭では「寺庭料理」が頂けます。初めて目にした言葉ですが、おそらくご住職の奥様がつくる家庭料理ではないかと思います。地域とのつながりを重視していて「こども食堂」を開設しています。
門前に「現在日本唯一の大手水鉢」が置いてありました。明治に山口県の吉川藩が廃藩となり、その倉庫番の佐野家は玉龍院の檀家でした。佐野家の邸宅に安置されていた吉川藩の手水鉢が、平成19年(2007)に寄進されたものです。
「恵光院(えこういん)」 上の玉龍院とこちらの恵光院でも御首題がいただけます。
境内を一周して山門横の鐘楼の前まで来ました。
寺之内通に戻り、さらに西に歩きます。山門の外にも御会式桜(おえしきざくら)が咲いていました。
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