源光庵 〇□の窓と卍山道白禅師
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先日の記事の鷹峰の常照寺を出て源光庵を訪れました。「源光庵」は、山号を鷹峰山(ようほうざん)、正式名称を鷹峰山寶樹林源光庵という曹洞宗の寺院で、「復古禅林」ともよばれています。
室町時代の貞和2年(1346)大徳寺2世・徹翁義享(てつとうぎこう)(1295-1369)が隠居所として開創したのがはじまりで、当初は「復古堂」とよばれ臨済宗に属しました。下の総門には創建時の「源光普照」の扁額がかかっています。
江戸時代の元禄7年(1694)、加賀・大乗寺の卍山道白(まんざんどうはく)禅師(1636-1715)により再興され、曹洞宗に改められました。総門はその時期に建立され、2015年に道白禅師400回忌を記念して再建されました。「道白禅師像」
下の山門は二層造りで、扁額の「復古禅林」は、当時の曹洞宗の慣習を批判して長い間の運動の末に元来の姿に戻した道白禅師の寺を意味しています。
日本曹洞宗では、道元禅師の開宗から200年を過ぎたころ、嗣法(しほう)の制度を始めとして本来の規律が失われ、様々な弊害が起きていたといわれています。嗣法とは禅宗において弟子が師の法を継ぐことです。(山門の手前に「鐘楼」があります。)
すなわち嗣法において 、師僧から弟子に面授される「人法」よりも、寺院の住職を継ぐことによって伝えられる「伽藍法」が支配的となり、様々な混乱と弊害を生じていました。(山門を入ると正面に本堂、右隣に書院があります。)
伽藍法を簡単に言えば、伽藍に法系が付随していて、その建物を相続することにより師の教えを受け継いだことになるというものです。本堂の建物は、元禄7年(1694)に寺が再興された際に金沢の富豪・中田静家が寄進したものとされます。
道白禅師は、嗣法は道元が尊重した人法であるべきだとする宗統復古運動に尽力しました。さらに萬福寺を創建した隠元禅師を手本として、乱れを生じていた宗派の規矩を整理、刷新を図りました。(右手にある庫裡が拝観受付です。)
道白禅師らの改革は根強い抵抗にあい、40年にわたって運動が続けられました。禅師が自らを「復古老人」と呼んでいたことからも当時の状況が想像できます。(拝観受付を過ぎるとまず書院に上がります。)
源光庵を開いた2年後には、60歳でしたが梅峰竺信(ばいほうじくいん)らと江戸に赴き宗門悪弊を改めるよう僧録司に訴えました。僧録司(そうろくし)は寺院の訴訟や僧侶の任免などを管轄する最高位の役職です。(庭は北山を借景とする枯山水庭園。)
道白禅師らの運動は寺社奉行を動かし、永平寺法度・總持寺法度の制定によって改革は達成されました。元禄16年(1703)道白禅師は源光庵に帰りましたが、既に67歳になっていました。 (□と〇の庭)
書院から隣の本堂が見えます。左の渡り廊下から本堂にあがります。
渡り廊下の途中に花頭窓があります。
本堂に入ると本尊を祀る内陣の右手におなじみの角窓と丸窓があります。中央から二つの窓が見えますが、ここからは紅葉が見えません。
「迷いの窓」は「人間の生涯」を象徴して、生老病死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦(ぐふとくく)、五蘊盛苦(ごうんじょうく)の四苦八苦を表しているとされます。
「悟りの窓」は宇宙を表し、「禅と円通」の心を象徴して悟りの境地を教えているとされます。
まず迷いの窓の前で自問自答し、次に悟りの窓の前で自己を見つめ直すと、純粋な本来の自分に戻ることができるそうです。斜めからは両方の窓に少し紅葉が見えます。
廊下の天井は伏見城の遺構で、慶長5年(1600)関ヶ原の戦いの前哨戦で徳川家家臣・鳥居元忠らが石田三成軍に破れ自刃したときの床板です。「血天井」が見どころの一つだとするのはちょっと?ですが、戦死者の霊を供養しているのだそうです。
中央の内陣に本尊の「釈迦牟尼仏」、脇立は「阿難尊者」、「迦葉尊者」を安置しています。向うの混雑しているのが□と〇の窓です。
内陣の左に「霊芝観世音」が祀られています。道白禅師が宇治田原の山中で見つけた観音像で、後西天皇の信仰が篤かったといわれます。
拝観順路に従って、本堂の左手の建物に入ります。ここには様々な資料がおいてあり、向かいに見えるのは庫裏です。
額の「潜行密用 總持辰三叟」は曹洞宗の経典にある禅語「潜行密用(は愚の如く魯の如し)」を表しています。「本当に大切なことは人知れず行うことで、それは愚(おろかもの)や魯(でくのぼう)と思われることも多い」という意味だそうです。
總持辰三叟とは曹洞宗大本山・總持寺第25世貫首、曹洞宗管長を務めた江川辰三(しんざん、1928-2021)、叟(そう)は老翁のことで、額は道白禅師の精神を受け継いでいるようです。(山門の横に小さな庭があります)
このあと、光悦寺に向かいました。お帰りの際には、ブログランキングの応援のクリック↓をよろしくお願いします。
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コメント
こんばんは。ゆーしょーです。
丸い窓から眺める庭園の景色は素晴らしいです。
源光庵には丸い窓が何か所かあるのですね。ポチ♪2
投稿: ゆーしょー | 2024年11月30日 (土) 03:01