曼殊院 再建された宸殿と天満宮
過去の全記事 2006年1月27日から毎日更新しています。
昨日の記事の大書院と小書院を見たあと、境内の南西にある宸殿に向かいました。「宸殿」は歴代天皇・皇室関係者の位牌をまつる門跡寺院では中心となる施設です。(上は大書院から見た宸殿。)
しかし、曼殊院では明治5年(1872)宸殿を手放し、以来、宸殿の再建が歴代門主の悲願となっていました。以下でその間の事情を説明します。(大書院と宸殿の間の中庭)
明治政府は 明治元年(1868)に「神仏分離令」、明治4年には「寺領上知令」を発令しました。欧米の列強に対抗するために、これらの施策は日本の急速な近代化に寄与したといわれています。「護摩堂」
一方で、多くの寺領を失った寺院は困窮し、政府と呼応して仏教排斥運動(廃仏毀釈)が起こり、寺院は窮地に立たされました。被害を受けたのは門跡寺院も同様で、塔頭の統廃合を余儀なくされ神仏混合の建物は破却されました。
門跡寺院はそれまでの皇室との関係から、進んで天皇を元首とする明治政府に協力せざるを得ない立場にもありました。曼殊院では明治5年(1872)「宸殿」を政府に「献納」しました。宸殿の前庭は「盲亀浮木之庭」と呼ばれています。
宸殿は取り壊されて、京都府立医科大付属病院の前身である「京都療病院建設」のための資材として提供され、以後再建されていませんでした。(向うに見えるのは「唐門」。)
再建された宸殿には、大書院に祀られていた本尊の阿弥陀如来立像、元三大師像、十一面観音像などが遷されています。元三大師は天台僧の良源、十一面観音像は北野別当職を務めていた良尚親王が晩年に曼殊院に遷したものです。
宸殿の前には「天皇皇后両陛下 行幸啓記念樹」の橘(右)と豆桜(左)が植えられています。天皇皇后両陛下は平成24年(2012)に曼殊院を訪問されました。
正面にあるのが「盲亀浮木(もうきふぼく)」の岩です。大海中に棲む目の見えなくなった老海亀が百年に一度水面に浮き上がってきた時に、大海に漂っている穴の空いた流木に偶然首を突っ込むという喩え話を表しています。
それほど人間に生まれ、仏教に巡り合うことは難しい(めったに起こらない)ことを表しているそうです。左の木片を表す岩は天然記念物の木船岩です。
全国からの多くの募金によって宸殿の建物や前庭は復興されましたが、まだまだ資金は追いつかず、一部の仏具や室内の装飾品などが不足しているそうです。(北通用門から外に出ます。)
曼殊院では引き続き募金をお願いしています。宸殿の完全復興までにはまだ時間がかかるようです。
曼殊院を出て、境内の北西にある弁天島に立ち寄りました。
弁天島を囲む「弁天池」、青もみじが見事でした。
左は「弁天茶屋」でスイーツや丼、御膳弁当などがありますが、このときは閉まっていました。正面は「弁天堂」、良尚親王が明暦年間(1655-1658)に建立し、後の1833年(天保3・4年)に再建されました。
祀られている弁財天像は比叡山延暦寺の無動寺弁財天の御前立とされ、無動寺に参詣する際にはこの弁財天に参った後に山に向かったといわれます。また、比叡山を登る体力がない者はこの弁天堂を拝んで帰宅したと伝わっています。
隣の「曼殊院天満宮」は、室町時代末に建立された曼殊院で最古の建物とされます。かつて一乗寺山にあり、現在地に移されたともいわれています。
天満宮が曼殊院の鎮守社とされたのは、延暦寺や曼殊院と北野天満宮との関係からです。菅原道真が生前に師と仰いだ延暦寺の高僧・尊意(後の天台座主)は、道真の怨念を鎮める力を持っていたといわれています。
延暦寺の鐘楼下の石段の途中にある「登天天満宮」には道真の怨霊が転じた十一面観音を祀っています。道真の怨霊が尊意の説法に悔い改めて十一面観音となって天に上ったと伝わっています。(天満宮の前の手水鉢)
923年醍醐天皇の勅願により、都の水害・火災を鎮めるために尊意によって菅原道真の神霊を勧請したのが水子天満宮です。
また、曼殊院の歴代門主が北野天満宮の別当職を兼務してきたことも両者の強いつながりを示しています。
ところで、別当職は神事や祭典行事を司る社家の一族(松梅院・徳勝院・妙蔵院)や、北野天満宮に奉仕する宮仕(みやじ)と呼ばれる方々の統治をしていたそうです。
実務には曼殊院から派遣された目代(もくだい)と呼ばれる代理人があたっていました。曼殊院と北野天満宮の立場の違いが分かります。(弁天池の西部)
明治の神仏分離令によって、上のような神仏習合の関係は終わりましたが、天満宮は今なお鎮守社として曼殊院を守っています。
紅葉の頃になると弁天島は賑わいをみせ、露店のテントがでて弁天茶屋も開きます。
この後、修学院離宮や赤山禅院の方に向かいました。最後の写真は修学院山です。
お帰りの際には、ブログランキングの応援のクリック↓をよろしくお願いします。
★こちらを是非よろしく→ ブログ村→
-------------------------------------------------------------------
| 固定リンク
コメント
こんばんは。ゆーしょーです。
曼殊院、メチャきれいな建物ですね。
庭がまた凄いです。 ポチ♪2
投稿: ゆーしょー | 2024年6月 8日 (土) 00:01