風俗博物館 藤原道長の春日詣
←目次 2006年1月27日から毎日更新しています。
西本願寺の近くにある風俗博物館に行ってきました。「風俗博物館」は古代から近代にいたるまでの日本の風俗・衣裳を実物展示する博物館として昭和49年にオープンしました。平成10年からは、「源氏物語」の様々なシーンを題材にしています。
一定割合で縮小された建物、衣装、人形を使って立体的に表現する「具現化展示」によって、登場する人物の表情、装束の色目や文様まで詳細に表現され、平安時代の宮廷や貴族の生活を直感的に感じることができます。
最初の展示は、「??(はくたく)の宴」と題して藤原道長の春日詣の献饗の場面を表しています。春日社は768年に藤原氏によってその氏神と祖神を合わせ祀って創始され、藤原氏の絶大な権勢とともに、朝廷の公的な祭祀を受ける別格の社となりました。
道長の『御堂関白記』、藤原行成の『権記』には春日詣に参列した公家たちの名が記され、藤原頼長の日記『台所別記』には、春日社での神事の翌日に催された宴の内容や参加者につい詳細な記録があります。
奥にいるのが道長ですが、興福寺の僧侶が付き添っています。興福寺は藤原鎌足の夫人・鏡大王が夫の病気平癒を祈願した山階寺が始まりです。平城京遷都に際して藤原不比等によって春日野に遷され、藤原氏の氏寺として庇護され発展していきました。、
春日社と興福寺はともに藤原氏ゆかりの社寺でしたが、平安時代になると両者は一体化するようになりました。特に興福寺の方が神仏習合して春日社を支配しようとする動きが激しくなりました。左は道長の長男・頼通、右は道長の信頼が厚い藤原行成。
興福寺の衆徒らが春日神木を振りかざす強訴は70回に及び、平重衡の南部焼き討ちにつながっていきます。朝廷や藤原氏からの寄進に加え、春日社に寄進された摂関家領なども実質は興福寺の管理となりました。
御簾の向こうは殿上人。殿上人は、令制で官職が三位以上の者および四位、五位のうちで昇殿を許された者です。建物は奈良郊外に藤原氏が所有していた「佐保殿」を想定していて、藤原氏が春日社や興福寺に参拝する際の宿舎に利用されました。
このような神仏習合は江戸時代末まで続き、上で述べた記録から春日詣の神事にも興福寺の僧侶が加わり、翌日の宴も興福寺別当以下多くの僧侶が参加していることが分かっています。警護の侍が控えています。
「酒部所(さかべどころ)」は、宮中の大宴(大饗)などで酒の燗をしたところです。室町時代の故実書『貞順故実聞書条々』には、平安時代初期の貴族・藤原冬嗣の言葉として、燗は9月9日から3月2日までの寒い時期と定めています。また??もここでゆでています。
「僧綱(そうごう)の僧」 僧綱とは僧尼を管理するためにおかれた僧侶の職で、平安時代にはその役所・僧綱所が西寺におかれ、僧正1名、大僧都1名、小僧都1名、律師4名と定められました。この宴にも僧綱から僧が参列していました。
春日社で饗された??は、郷土食として親しまれている山梨県の「ほうとう」や平泉の「はっと」のルーツといわれています。妓女(芸妓)が棒で小麦粉をついて練っていきます。
摂関家藤原氏が春日社の神事と競馬の後に黒木御所で催した宴では、庭中に幄舎を設けて8~20人の妓女が楽に合わせて??を打ち、饗されるという趣向を凝らしたものでした。??は神事と深く関わる食事だと考えられています。
??は、シルクロードの中継都市として栄えた敦煌でも食べられており、?片という家庭料理として現存しているそうです。この宴が催された頃、平泉を中心に奥州藤原氏が栄え中国からの経や陶磁器とともに、??も東北まで伝わったと考えられています。
シルクロード世界の食べ物が、京の都を経由して、1000年の時を経て日本各地に受け継がれているとも考えられます。
道長の長女・彰子が一条天皇の皇后となり、以後天皇や上皇の春日詣も恒例化しました。
こちらは建物の外で警護する武士。
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コメント
おはようございます。
「風俗美術館」丁寧な説明でよく内容が理解できました。
一度は行って見たい所です。
紹介ありがとうございました。
投稿: さゆうさん | 2017年8月 5日 (土) 09:40
風俗美術館
今にも動き出しそうですね。
リアルで凄いと思います。
投稿: munixyu | 2017年8月 5日 (土) 10:01
★さゆうさん こんばんは♪
小さなビルの1フロアーだけの風俗博物館ですが、時間がたつのを忘れてしまいます。平安時代の歴史の一コマが立体的に再現されていて、その中にいるように錯覚してしまいます。一度は訪れたいところです。*美術館ではなく、博物館でした。訂正します。
投稿: りせ | 2017年8月 6日 (日) 00:14
★munixyuさん こんばんは♪
小さな博物館ですが、中の展示を見ているといくら時間があっても足りません。歴史の1シーンを3次元的に表現するため、建物や人物、衣装、室内の調度など細部に至るまで時代考証を重ねて作られていて、迫力があるリアリティーです。、
投稿: りせ | 2017年8月 6日 (日) 00:22