直指庵 2015秋
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紅葉情報によると嵐山、嵯峨野は既に見頃ということで、まずは北嵯峨野の直指庵を訪れました。
直指庵(じきしあん)は、臨済禅を学んだ独照性円(どくしょうしょうえん)が正保3年(1646)に北嵯峨細谷に草庵・没蹤庵(もっしょうあん)を結んだのが始まりです。
独照が明の高僧隠元隆琦に黄檗禅を学び、隠元を直指庵に請じてからは、伽藍を建立するなどし、直指庵は大寺院となりました。(本堂、拝観受付があります。)
その後、独照は枯松の枝が地に落ちるのを見て、黄檗禅の「直指人心」の境地に至り、「直指庵」と名づけました。(本堂での写真撮影は縁側から外だけが可能です。)
庵がすでに大寺院になっているにもかかわらず、黄檗の正統を守り寺号をつけるのを避けて、庵の名前で呼んだのです。
「直指」とは、文字や言葉などによらず、直接的に指し示すこと。「人心」は、自分の心の奥底に存在する、仏になる可能性ともいうべき仏心・仏性といわれるものだそうです。
結局、「直指人心」とは、自分の奥底に潜む心を凝視して、本当の自分、すなわち仏心、仏性を直接的に把握することだそうです。
独照の弟子・月潭が直指庵の2世となり、詩文をよくして高僧の名をたかめましたが、その後は法嗣が衰えて、独照の墓堂が残るだけとなりました。(本堂を出て右手の斜面沿いの道を行きます。)
「愛逢い地蔵」 縁結び、恋愛成就にご利益があるとか。
左手に石段があり、その途中に与謝野晶子の歌碑があります。「夕ぐれを 花にかくるる 子狐の にこ毛にひびく 北嵯峨の鐘」
「開山堂」 独照禅師の墓と、独照と月譚の木像を安置しています。
幕末に、尊皇攘夷活動家であった津崎村岡局が兄の孫の寿仙尼とともにこの直指庵に入り、寺を再興して浄土宗に改めました。(このあたりは日当たりがよいのか、紅葉の色が濃くなっていました。)
村岡局は、大覚寺門跡家臣津崎左京の娘でしたが、公卿の近衛忠熈(ただひろ)に侍女として仕え、その長である「老女」となり村岡局と名乗りました。「近衛家の清少納言」といわれるほどの才女でした。
安政3年(1856)篤姫(天璋院)が徳川家定に嫁ぐと、村岡局は養母として江戸に下りました。篤姫は島津家の生まれですが、近衛家の娘として嫁いだのです。(開山堂の前の「亀石」)
村岡局は、近衛家、公卿と尊攘派の志士との間の連絡に当り、尊攘派の僧・月照や西郷隆盛らとも親しくし、安政の大獄(1858-1859)では二人を西国に逃がしたともいいます。
自らも、安政6年(1859)に京都町奉行所の取調べを受け、江戸で押込30日の刑に処せられました。その後も再び逮捕されますが、蛤御門の変(1864年)では近衛家に出仕しました。
維新後は賞典禄20石を賜り、直指庵で余生を送り、付近の子女の教育に努めました。そして、明治6年(1873年)に亡くなりました、享年88歳。
村岡局の墓 「勤王の女傑」と書いてあります。嵐山の亀山公園には銅像が建っています。
明治13年(1880)に直指庵の建物は焼失してしまいますが、明治32年(1899)に有志により再興されて現在に至ります。「水子地蔵尊」
「想い出草観音」
昭和37年(1962)に広瀬善順尼が庵主となり、直指庵の名前が全国に知られるようになりました。(修練道場 中は撮影できません。)
広瀬尼は京都に生まれ、15歳で得度し、京都、岐阜で修行しました。直指庵の庵主になると、庵を訪れた人の悩みの相談にのり、来訪者が思いを綴った「想い出草」は5000冊以上になるとか。
特に、女性の悩みの相談に応える「駆け込み寺」や「泣き込み寺」として知られるようになり、全国から大勢の女性が訪れました。
昭和55年(1980)に相続問題がおこって男性住職に交代して、広瀬尼は寺を出てその4年後に亡くなりました。
現在の庵主は、村岡局が浄土宗の「尼寺」として再興したというのは誤りだという立場だそうです。いずれにしても、救いを求める女性が詰めかける寺ではなくなりました。
寺を再興した二人の女性庵主を思いながら、境内にある歌碑、女性が信仰してきた地蔵や石仏を見るとちょっともの悲しい気がしました。
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コメント
直指人心。
難しい世界だね。
駆け込み寺・・・いろいろ考え込んでしまうよね。
投稿: munixyu | 2015年11月27日 (金) 12:37
素朴でありながら洗練されていていいですね~。
竹垣や茅葺きの屋根がほんわかします。青竹の緑と、紅葉、そこから覗く青空。。。爽やかとはこのこと!!
この穏やかな景色の中にありながら、紆余曲折のお寺の歴史を考えると複雑な心持になります。村岡局も広瀬善順尼も誰かの助けになりたいという気持ちが伝わってきますね。。。相続問題の真相はどうあれ、救いの場を一つ減らしてしまったことは事実。
まっとうな事をしている人が報われる世の中であってほしいなぁ。。
投稿: ばるさろ | 2015年11月27日 (金) 21:56
★ばるさろさん こんばんは♪
現在のご住職も、以前の「駆け込み寺」という世間の認識があって、苦労しているようですね。現在は、お寺や神社でもそれぞれの個性を出していかないと、経営が苦しい時代になってしまいました。
投稿: りせ | 2015年11月29日 (日) 19:33
★munixyuさん こんばんは♪
以前でも、直指庵は「駆け込み寺」ではないと、広瀬尼自身がおっしゃっていました。でも、そう思ってこられる方を追い返すようなことはしなかったそうです。
投稿: りせ | 2015年11月29日 (日) 19:40
こんにちは。説明に少し誤りを感じたので、長文にはなりますがコメントをお許し下さい。
私は2年程前に、神戸の浄土宗のお寺に嫁ぎました。お寺に嫁ぐ前から直指庵さんへお参りさせて頂いていたので、結婚してから旦那さんから色々と聞いて直指庵さんの内情等を知っています。
まず、お寺の住職には「得度」しただけではなれません。
住職は僧侶でなければなれません。
浄土宗では、僧侶になるために「加行」という行を受けなければなりません。
なので、村岡局は日本の功労者ではありますが、僧侶ではなかったので、尼僧ではないのです。
また、広瀬さんは直指庵に住んでいらっしゃった時、僧侶ではありませんでした。
実は、今のご住職は村岡局の血縁者です。
そもそも、今のご住職のお父様が直指庵の住職をされていた頃、脳梗塞になられ直指庵を離れて養生される際に、寺の親類が某寺院の下働きをされていた広瀬さんに留守番を頼まれたことが始まりでした。
広瀬さんが剃髪して僧侶の格好をして直指庵に入って、その姿がマスコミに受け有名になったのです。相談にきた女性たちをお寺に泊めたりもされていましたが、その際の対応はさまざまでした。決して綺麗な話ではありません。
私が聞いた話では、今の直指庵の基礎を気づかれたのは、村田成節尼(むらたじょうせつに)と小田隆禅上人(おだりゅうぜんしょうにん)です。
お二人と村の有志で消失した本堂を建て直されました。その後、今のご住職(小田芳隆上人)が市や小作の方から土地を買い戻されて山門からの道やお地蔵様・観音様・阿弥陀堂等を建てられたのです。
私がコメントを書いて嫌な思いをされるかもしれません、しかし、
直指庵を参拝されたのならお気づきと思いますが、市内の人並みがウソのように訪れる方が少ないですよね。それなのに、竹で柵を作られたり芝垣で道を作られたり庭には苔が敷き詰められていて、凄く手が込んでいますよね。
この参拝人数で決して維持できないなと私は感じました。
道も階段も無かった、本堂しかなかったお寺を今のようなお寺にされるのは、並大抵の努力では出来ません、小田ご住職が全国に布教に行かれて、そのお布施で直指庵を維持されていると聞いて私は頭が下がる思いでした。長文失礼致しました。
投稿: kaede | 2015年12月 7日 (月) 18:53
★kaedeさん コメントで詳しい情報を教えていただき、ありがとうございます。♪
コメントを読んだ上で、改めてこの日の記事を読み返しました。コメントではどの部分が誤りなのかをはっきり指摘されていないのですが、該当すると思われる個所について説明させていただきます。
1.「昭和37年(1962)に広瀬善順尼が庵主となり、・・・」
コメントでは正式な庵主(住職)ではなかったとしています。しかしながら、当時から庵主として紹介されていて、書籍をはじめとする多くの記録にそう書いています。住職ではないとする根拠を書かれていますが、当然御存命ならば反論もあるかも知れません。そして何よりも、京都の人々は広瀬さんを直指庵の庵主だと認識していました。コメントをこのまま残させていただき、読む人の判断にゆだねたいと思います。
2.「昭和55年(1980)に相続問題がおこって男性住職に交代して、広瀬尼は寺を出て・・・」
この部分は、私なりに客観的に書いたつもりです。コメントでは一方の言い分を紹介していますが、当時の騒動を覚えている方は、もっと生々しい話もご存じだと思います。そのようなことには立ち入らず、単に外形的な事実だけを書きましたので、ご理解ください。
3.「・・・津崎村岡局が・・・この直指庵に入り、寺を再興して浄土宗に改めました。」、「寺を再興した二人の女性庵主を思いながら、・・・」
コメントでは、直指庵を再興されたのは別の方だと指摘されています。しかしながら、直指庵のホームページの「直指庵の由来(歴史)」によると、「幕末の頃、近衛家老女津崎村岡局がこの直指庵に入り、再興、浄土宗の寺とし、土地の子女の訓育につくし現在に至る。」と明記しています。従いまして、村岡局が再興したというのは間違いでないと思います。私の記事では、再興したもう一人は広瀬さんを指しています。コメントで指摘されたように、直指庵の建物を「再建」されたのは別の方なのでしょう。しかしながら、北嵯峨野の不便な場所にある寺の名が、京都だけでなく全国に知られるようになったのは広瀬さんの功績です。そして、今でもその当時の直指庵だと思って訪れる方が絶えません。このことを「再興」と表現することが問題ならば、見解の相違としかいいようがありません。
最後に、いろんなことがあるにしても、広瀬さんが直指庵にいらっしゃった時期に、沢山の女性が訪れて何らかの救いを得、訪れなくても心の支えとなり励まされたのは事実です。現在のご住職にはそのような方々の心をもっと大切にして欲しいと思います。直指庵の歴史からこの時期を消し去ることには、多くの方が違和感を感じています。
投稿: りせ | 2015年12月 8日 (火) 15:46
医療従事者の一人として、広瀬さんの晩年に関わらせていただけた者です。たまたま、このページにたどり着き、記事もコメントも懐かしく読ませていただきました。(入院を知った黒柳徹子さんから花束が届いたことなど思い出しました。番組に出演されたこともあったようです。)浄土宗の寺の近親でもあるので、立場によっていろいろな意見があって当然だと思います。寺に関わった全ての人々が仏性に近づくことを祈っています。
投稿: りさ | 2019年9月28日 (土) 11:02
★りささん こんばんは♪
お返事が大変遅れて申し訳ございませんでした。広瀬さんと直指庵のことを思い返すと、宗教とは何かということを考えさせられます。また、寺院の経営が難しい時代で、直指庵のことが気になっていました。このとき訪れたところ、境内はきれいに整備されて、新しい墓地もできてちょっと安心しました。
投稿: りせ | 2019年10月 9日 (水) 02:13